スパイスを使った鶏肉料理として、ケイジャンチキンとともによく比較されるのが「ジャークチキン」と「タンドリーチキン」です。見た目が似通っているため混同されがちですが、発祥地域、主役となるスパイス、調理アプローチには明確な一線が画されています。
まず、ケイジャンチキンとジャークチキンの違いにおける最大のポイントは「主役となるスパイス」と「辛さの質」です。ケイジャンがパプリカパウダー、ガーリック、タイム、オレガノを中心に旨味と香りを組み立てるのに対し、カリブ海の島国ジャマイカ発祥のジャークチキンは「オールスパイス(百味胡椒)」と「スコッチボネット(極めて辛い唐辛子)」が主役です。ジャークチキンにはさらにライム果汁や香味野菜のマリネ液が使われ、爽やかな酸味と突き抜ける鋭い辛味が際立ちます。
一方、インド発祥のタンドリーチキンとの違いは、乳製品によるマリネプロセスにあります。ヨーグルトにガラムマサラ、クミン、コリアンダー、ターメリックなどのパウダースパイスを溶かし込み、肉をじっくり漬け込んでから高温のタンドール窯で焼き上げます。肉質をヨーグルトの乳酸で極限まで柔らかく仕上げるタンドリーに対し、ケイジャンチキンは肉の表面にドライスパイスを擦り込んで外側を香ばしく焼き上げる「ブラックンド(焦がし)調理」の手法がベースとなっています。