風邪を引いた際に生じる不快な耳の閉塞感は、決して耳そのものだけの異常ではなく、鼻腔環境の悪化と連動して発生します。大手ヘルスケア関連の調査データによると、風邪の初期症状として自覚される違和感の中で「のどの痛み」に次いで多いのが「鼻水・鼻づまり」であり、全体の59.4%もの人がこの症状を経験していると報告されています。耳と鼻の奥は「耳管(じかん)」と呼ばれる極めて細い管で直結しているため、鼻に異常が生じれば耳へダイレクトに波及する構造になっています。
通常、耳管は普段は閉じており、つばを飲み込んだりあくびをしたりする瞬間にだけ開いて、鼓膜の奥にある中耳腔の気圧を外気圧と同等に保つ弁のような働きを担っています。しかし、風邪のウイルスや細菌によって鼻や上咽頭の粘膜が赤く腫れ上がると、耳管の鼻側開口部が塞がれ、換気機能が物理的に遮断されてしまいます。これが、いわゆる風邪鼻水耳が詰まる原因の根幹です。
耳管が塞がって空気の出入りが滞ると、中耳腔の空気が周囲の組織に吸収されて内部が陰圧(気圧が低下した状態)になり、鼓膜が内側へと強く引っ張られます。この物理的なテンションによって鼓膜の振動が鈍くなり、「水の中に潜っているようなこもり感」や「自分の声が頭の中で異常に響く(自声強調)」といった耳管狭窄症症状が引き起こされるわけです。