長門裕之さんの経歴における最大のブレイクスルーは、1956年の日活映画『太陽の季節』でした。石原慎太郎氏の芥川賞受賞作を映画化した本作で、長門さんは型破りな若者像を熱演。映画は大ヒットを記録し、慎太郎刈りやアロハシャツが街に溢れる「太陽族ブーム」という社会現象のアイコンとなりました。そしてこの作品で運命のヒロインを演じていたのが、後に生涯の伴侶となる南田洋子さんでした。
スタアとしての地位を確立した長門さんは、巨匠・今村昌平監督のミューズとしてさらなる高みへ到達します。1959年の『にあんちゃん』では貧困の中で生きる兄を情感豊かに演じ、ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。さらに1961年の傑作『豚と軍艦』では、米軍基地の街・横須賀でチンピラとして這い回る主人公・欣太役を怪演し、日本映画史に残る圧倒的なリアリズムを刻み込みました。
テレビ時代に入ると、国民的人気ドラマ『池中玄太80キロ』シリーズで主人公を叱咤激励する通信部長・楠公さん役を演じるなど、人間味あふれる名バイプレイヤーとして幅広い世代から絶大な支持を集めました。