ペドロ・アルモドバル監督の名作映画『トーク・トゥ・ハー』は、昏睡状態にある女性患者に献身的に話しかけ続ける看護師の姿を描き、意識障害患者に対する臨床現場のあり方と倫理的な葛藤を浮き彫りにした。
患者は目を開けているように見えても、こちらの言葉が届いているのかはわからない。それでも語りかけを続けるべきなのか。医療ジャーナリズムの立場から現場を取材すると、家族や医療スタッフの葛藤は根深い。応答のないベッドサイドでの毎日の語りかけが、単なる自我の投影なのか、それとも患者の脳に刺激を与える科学的なアプローチなのかという問題だ。
近年の研究では、家族の声を聞かせた際に患者の聴覚野や感情を司る扁桃体が特異な反応を示すことが証明されている。映画が描いた「話しかけ続けること」の意味は、今日において医学的にも臨床的意味を持つアプローチとして見直されている。