滋賀のバームクーヘンが全国的な知名度を獲得した最大の要因は、従来のドイツ伝統製法とは一線を画す「徹底した日本人好みの食感設計」にあります。ドイツの伝統的なバウムクーヘンは、油脂にバターのみを用い、しっかりとした重厚な噛みごたえを持つ堅牢な焼き菓子でした。これに対し、クラブハリエの創業者たちが目指したのは、口に入れた瞬間に溶けるような「極上のしっとり感」でした。
この革新的な食感を生み出す基盤となったのが、母体である和菓子舗「たねや」の歴史です。明治5年(1872年)創業のたねやで培われた「生地の気泡を繊細にコントロールする職人技」が、洋菓子の現場へと見事に移植されました。卵の泡立て加減や小麦粉の合わせ方において、和菓子のカステラや蒸し菓子に通じる繊細な手わざが投入された結果、職人が付きっきりで火加減を調整しながら何層にも重ねて焼き上げる独自の製法が完成したのです。
さらに、外側を薄くコーティングするグラズー(砂糖衣・フォンダン)の絶妙なシャリシャリ感と、内側のスポンジ生地の柔らかな弾力とのコントラストが、唯一無二の多重構造を生み出しています。公式発表や関係者の記録によると、職人が一人前として一本焼きを任されるまでには何年もの厳しい修行が必要とされており、機械任せの大量生産では決して再現できない「手焼きの温もり」が、品質への絶大な信頼を支えています。