事件から派生した波紋は、芸術や映画の世界へも深く波及した。辺見庸の小説を原作とし、石井裕也監督が手がけた映画『月』は、この凄惨な事件を真正面から捉え直した大作として話題を呼び続けている。
石井裕也監督は作品を通じ、凶行に及んだ個人の異常性を糾弾するだけにとどまらず、彼を生み出した社会の冷淡さや介護現場の過酷な現実にカメラを向けた。鑑賞者に対して「自分自身の中にも彼と同じような差別心や諦念が潜んでいないか」と突きつける演出は、多くの人々に衝撃を与えた。映画『月』は単なるフィクションを超え、日本社会が直視を避けてきた暗部を映し出す鏡としての役割を果たしている。