あのショッキングな逮捕劇から長年の月日が経過した。厚生労働省の幹部として行政の第一線で活躍していた村木厚子氏が、身に覚えのない容疑で突如として身柄を拘束された事件である。取調室での過酷な取り調べと自白の強要、メディアによる一方的な犯人視報道など、あまりにも不条理な圧力が一家を襲った。
当時、まだ若かった二人の娘たちにとって、日常は一夜にして奪われた。学校や周囲の視線、自宅周辺を取り囲む報道陣という極限状態のなかで、彼女たちが選択したのは「母を疑わず、最後まで信じぬくこと」だった。面会すら制限される厳しい状況下で、娘たちは母の好む本や励ましの便りを欠かさず届け、独房にいた母の心の灯火を消さなかったのである。