木村伊兵衛写真賞を受賞し、ガーリーフォトのムーブメントから一線を画す圧倒的な色彩美学を確立したのが蜷川実花だ。影を削ぎ落とした過剰なまでに鮮やかな花々、金魚、そしてモデルたちの姿。彼女がレンズ越しに作り出す世界は、平成という時代が内包していた空虚さと、それに対する過剰なまでの生の肯定感を象徴していた。
写真家として頂点を極めた彼女が、その濃密な視覚世界を映像へと昇華させた決定打が映画『ヘルタースケルター』である。芸能界の光と影、美への狂気と破壊衝動を描いた同作は、スクリーンの隅々まで蜷川調の原色で埋め尽くされ、映画表現に強烈な美学をもたらした。平面の写真表現から空間と時間を含む映画制作へ。彼女の軌跡は、単なる写真家の枠を超えて現代アートの領域へと軽やかに飛び出していく平成のクリエイター像を最も鮮烈に示している。