果物と野菜の境界線をめぐる議論において、最も劇的な逆転現象を見せるのがアボカドの分類です。サラダやハンバーガー、ワサビ醤油で食べる副菜の定番として親しまれているため、多くの人が「野菜」だと思い込んでいます。しかし前述の通り、アボカドは樹高10メートル以上にも及ぶクスノキ科の高木に実をつけるため、植物学上も公的分類上も完全に純度100%の果物です。
世界に目を向けると、果物と野菜の定義をめぐって最高裁判所の法廷で国家規模の論争が繰り広げられた歴史的事実も存在します。それが1893年にアメリカで判決が下された、極めて有名な「ニックス対ヘデン事件(トマト裁判)」です。
当時のアメリカの関税法では、輸入野菜には10%の関税が課される一方、果物は免税と定められていました。ニューヨーク港の輸入業者ニックス氏は、「植物学上、トマトは種子を含んだ果実(フルーツ)であるから関税は不当だ」と主張し、徴税官のヘデン氏を相手取って訴訟を起こしたのです。
辞書や植物学者の証言が飛び交う激論の末、連邦最高裁のグレイ判事は次のような歴史的判決を下しました。「トマトは植物学的には果実である。しかし、食卓では主菜やスープの具材、食事の一部として供され、デザートとして食されることはない。商取引および市民の日常会話における意味において、トマトは野菜である」。
130年以上前の司法判断が示した通り、「学問的な正しさ」と「人々の文化・生活感覚」が衝突した際、法律や商習慣が生活実態を優先させた好例といえます。海外でも日本と同様の論争が存在した事実は、この問題の根深さと普遍性を物語っています。