ネット上の掲示板や大手SNS、現地駐在員のコミュニティには、文化の違いを読み違えたことによる生々しいトラブル事例が後を絶ちません。現場で頻発する2大失敗事例を取り上げます。
失敗談1:「気を利かせて勝手に料理を取り分け、相手を不快にさせた」
日系大手メーカーの駐在員として上海に赴任した30代男性の告白です。
「日本の居酒屋ノリで、唐揚げや大皿料理が運ばれてくるたびに、下座にいた私がせっせと小皿に人数分取り分けて配りました。日本では『気配りができる優秀な若手』と褒められる行動です。ところが、現地の取引先幹部は露骨に嫌な顔をして、私が盛った小皿の料理に一切手をつけませんでした。後で現地スタッフから『中国では、自分が今何を食べたいか、どの部位が欲しいかは自分で選ぶ。他人に勝手に触られた料理は食べたくないし、親でもないのに領域を侵害された気分になる』と注意され、血の気が引きました」
中国のテーブルでは、自分の箸や公用のスプーンを使い、「自分が食べたいタイミングで、食べたい分だけを自分の皿に運ぶ」のが不可侵の原則です。大皿を勝手に小分けにする行為は親切ではなく、選択肢を奪うおせっかいと受け取られます。
失敗談2:「レジ前で割り勘を申し出て、商談が破談寸前になった」
IT企業の営業担当者が北京での会食で犯した失態も教訓に満ちています。
「現地の提携候補企業の社長にご馳走になった際、恐縮してしまい、レジ前で『当社も半分支払います、領収書を分けてください』と財布を取り出しました。すると、温厚だった相手社長の表情が一変し、『私にはあなた方にご飯一杯奢る金すらないとお思いですか?』と激怒され、その後の商談が凍りつきました」
中国において、会食の会計は単なる経費精算ではなく、「メンツの証明」と「人間関係(関係=グアンシー)の構築儀式」です。誘った側が全額を支払うのが絶対の掟であり、レジ前で割り勘を切り出すのは「相手に支払能力がないと見下す侮辱」に他なりません。奢られた側は素直に満面の笑みで感謝し、「次は日本へお越しの際に、私に最高のもてなしをさせてください」と返すのが唯一の正解です。