『ロマンスの神様』がシングルとして世に送り出されたのは、1993年12月1日のことでした。広瀬香美にとって通算3作目のシングルとなった本作は、スキー用品専門店『アルペン』のCMソングに起用されたことで瞬く間に社会現象となり、累計175万枚を超えるメガヒットを記録します。
しかし、その誕生秘話には意外なエピソードが存在します。当時、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に音楽制作を行っていた広瀬香美自身は、それまでスキーを一度も滑った経験がありませんでした。ウインタースポーツの肌感覚を持たないまま、クライアントから求められた「とにかく明るく、冬の寒さを吹き飛ばすような勢いのある曲」というオーダーに向き合うことになります。
そこで彼女がとったアプローチは、情景に頼るのではなく、人間の根源的なバイタリティや恋愛への渇望をアップテンポなポップスに昇華させることでした。クラシック音楽の高度な音楽理論とロサンゼルス仕込みのグルーヴを融合させ、聴くだけで体温が上がるような緻密なコード進行を構築。ウインタースポーツの知識がなかったからこそ、特定の季節に縛られない普遍的な生命力を持ったマスターピースが完成したのです。