加藤治子さんのキャリアの原点は、新劇の歴史を支えてきた名門劇団「文学座」にある。戦時中から戦後にかけて舞台女優として磨かれた立ち振る舞いや正確な発声、言葉の端々に宿る情感は、彼女のあらゆる演技の確かな礎となっていた。
やがて舞台から映画やTVへと活躍の場を広げ、日本映画界を代表する名監督たちの作品に欠かせない存在となっていく。立ち姿ひとつで画面の空気を一変させる天性の気品を発揮し、新劇の正統派な技術と、市井の人々に寄り添う自然体の佇まいを兼ね備えた稀有な女優として、演劇史に燦然と輝く足跡を残した。