世界の遺産保護を取り巻く環境は、気候変動や観光公害(オーバーツーリズム)、紛争によって大きな転換期を迎えている。パリに本部を置くユネスコ(国際連合教育科学文化機関)のオードレ・アズレ事務局長は、単に登録数を増やすことではなく、危機に瀕する遺産の保全と地域社会との共生を最優先課題として掲げてきた。
毎年開催される世界遺産委員会では、新規登録の審査だけでなく、保全状態が著しく悪化したサイトを「危機遺産リスト」へ指定する議論が白熱する。過度な観光開発への警告や、持続可能な管理プランの提示が求められており、加盟国にはかつてない責任が課されているのだ。