高齢者の肺は、加齢とともに予備能力が著しく低下している。厚生労働省の統計動向を見ても、肺炎は日本人の主要な死因上位に挙げられ続けており、特に80代以上における致死率は極めて高水準だ。若い世代であれば強い免疫反応として発熱や激しい咳が表に出るが、高齢者の場合は体温調節機能や免疫応答が鈍化している。そのため、炎症が肺全体に拡大して重篤な呼吸不全に陥るまで、表面的な症状が隠蔽されてしまう。
さらに、加齢による嚥下機能の低下に伴う「誤嚥性肺炎」の併発が事態をいっそう複雑化させる。唾液や食べ物とともに口腔内の雑菌が気管へ入り込み、激しい炎症を引き起こすのだ。また、代表的な致死性病原体である「肺炎球菌感染症」の侵入も引き金となる。現場の呼吸器内科専門医は「高齢者の肺組織は一度炎症を起こすと組織破壊が急速に進み、数時間単位で酸素飽和度が暴落するリスクがある」と警鐘を鳴らす。