「なぜ、死の危険を冒してまでベーリング海へ向かうのか」。その疑問に対する直接的な答えは、他業種では絶対にあり得ない圧倒的な報酬体系にあります。
ベーリング海のカニ漁師は固定給ではなく、船全体で水揚げした総売上から経費(燃料費、食費、餌代など)を差し引いた純利益を分配する「クルーシェア(歩合分配制)」で報酬を受け取ります。
熟練のデッキハンド(甲板員)の場合、タラバガニ漁のわずか数週間から1カ月程度の航海で、日本円にして約300万〜800万円前後を手にすることが珍しくありません。ズワイガニ漁などのシーズンを組み合わせれば、年間実働2〜3カ月程度で年収1,500万〜2,000万円以上を稼ぎ出すトップクルーも存在します。船長クラスになれば、年間で数千万円から1億円近い取り分を得るケースもあります。
学歴や経歴を問われず、自らの肉体と根性だけで短期間に大金を掴めるという「現代最後の一攫千金フロンティア」の夢が、借金を抱えた若者や一旗揚げたいタフな男たちを極寒の海へと駆り立てる原動力となっているのです。