「浅漬けの素で鶏肉を漬けるだけで、なぜこれほど完璧な塩から揚げになるのか?」という疑問の答えは、製品に含まれる成分の絶妙な配合バランスと、食品調理科学における保水メカニズムにあります。
エバラ食品をはじめとする主要メーカーの浅漬けの素には、食塩だけでなく、醸造酢、砂糖や果糖ぶどう糖液糖、昆布やカツオのエキス、アミノ酸などが黄金比率でブレンドされています。これらが鶏肉に作用することで、次のような劇的な変化が起こります。
第一に、醸造酢による筋繊維の軟化です。肉のpH(水素イオン指数)がお酢の酸によって酸性側に傾くと、筋原線維タンパク質(アクチンやミオシン)の構造が緩み、内部に水分を抱え込みやすい状態へと変化します。これが加熱しても肉汁が外へ逃げず、しっとり仕上がる最大の理由です。
第二に、浸透圧による旨味の急速浸透です。適度な塩分と糖分が浸透圧を生み出し、昆布などのグルタミン酸を中心とした濃厚な出汁成分を短時間で肉の深部まで浸透させます。通常の醤油や酒、みりんを独自に調合する下味付けでは塩分過多や味のムラが生じやすいところを、すでに完成された調味バランスが均一にカバーするため、誰が作ってもブレのないプロ級の塩味が決まります。