名古屋でメンマラーメンが独自の進化を遂げた背景には、昭和34年(1959年)に創業した「総本家好来(現在の好来道場)」の創業者・楓昭二氏が築き上げた確固たる哲学が存在します。好来系ラーメンの根幹を成すのは、豚骨や鶏ガラといった動物系素材に、タマネギ、人参、ニンニクなどの根菜類、さらに厳選された漢方生薬素材をじっくりと煮込んで抽出する「名古屋 薬膳ラーメン」のスープです。
創業当時の取材記録や関係者の証言によると、創業者は「毎日食べても飽きず、食べるほどに身体が整う一杯」を目指していました。スープの滋養強壮効果を高めるだけでなく、咀嚼による満足感と食物繊維の摂取を両立させるために着目されたのが、乾燥状態からじっくりと戻して煮込む特製の極太メンマでした。箸で持ち上げるとずっしりとした重みがありながら、前歯でスッと噛み切れる繊維の柔らかさは、長時間の丁寧な下処理と秘伝の味付けがあって初めて実現します。
好来系を語る上で欠かせないのが、他のラーメン文化には見られない独自のメニュー呼称です。一般的な「並・大盛り」「チャーシューメン」といった表記ではなく、縁起の良い植物や言葉を用いたシステムが受け継がれています。
- 松(まつ):基本となるラーメン(標準的なチャーシューと極太メンマ)
- 竹(たけ):極太メンマが丼一面を覆い尽くすメンマラーメン
- 梅(うめ):チャーシューが贅沢に敷き詰められたチャーシューメン
- 寿(ことぶき):チャーシューと極太メンマの両方が大盛りになった最高峰のスペシャル仕様
単なる奇をてらった大盛りではなく、「一杯の丼の中で医食同源を完結させる」という創業以来の信念が、半世紀以上の時を経て現在のメンマラーメン文化へと結実しています。