恋愛における情念の暴走や裏切りの痛みを表す花言葉も少なくありません。
春を彩るアネモネは「見捨てられた」「儚い恋」「恋の苦しみ」を意味します。ギリシャ神話において、美の女神アフロディテが愛した美少年アドニスが、猪(軍神アレスの化身)に突かれて命を落とした際、流れた鮮血からアネモネが咲いたと伝えられます。春風が吹くと一瞬で散ってしまう儚さが、報われない悲恋の象徴として語り継がれています。
鮮やかな黄色が魅力のマリーゴールドは、黄色系統において「嫉妬」「絶望」「悲嘆」という不穏な意味を持ちます。太陽神アポロンを愛した水の精クリティエが、アポロンの愛を得られずに嫉妬に狂い、彼を見つめ続けながらやつれ果てて花になったという神話に基づきます。さらに中世ヨーロッパのキリスト教絵画では、裏切り者のユダが黄色の衣服で描かれることが多く、「黄色い花=裏切り・不貞」という図式が広く定着しました。
日本原産の紫陽花(アジサイ)に付与された「移り気」「浮気」「冷淡」は、土壌のアルミニウム濃度や酸性度によって青からピンクへと色彩を変える性質に由来します。江戸末期にオランダ商館の医師シーボルトが愛妻「お滝さん」の名にちなんで学名(Hydrangea otaksa)を付けた美談がある一方で、幕末から近代にかけては「心変わりしやすい不誠実な女性」を揶揄する比喩として用いられた経緯があります。