「組員であることを隠してホテルに泊まっただけで詐欺罪」「銀行口座の開設すらできない」。暴力団排除条例(暴排条例)の浸透は、組織の末端を完全に兵糧攻めに遭わせています。かつて繁華街の飲食店や建設業界から吸い上げていた「みかじめ料」や利権は、企業のコンプライアンス強化によって徹底的に遮断されました。
実態を裏付けるように、法廷記録や引退した元組員の証言からは悲惨な生活実態が浮かび上がっています。「車も買えない、アパートも借りられない、スマホの契約すら家族名義でも拒絶される」。現役組員の平均年齢は55歳を超え、70代の組員も珍しくないという未曾有の高齢化が進んでいます。若い世代にとって、ヤクザ組織に加入するメリットは皆無に等しいのが現実です。
その結果、裏社会の地殻変動として急速に台頭したのが「匿名・流動型犯罪グループ」、通称トクリュウです。SNSや闇バイトを通じて使い捨ての実行役を集め、特殊詐欺や強盗を繰り返すこれらのグループは、従来のヤクザのような代紋や親分子分の盃を交わしません。暴力団側は自らの手足を動かさず、トクリュウに資金洗浄(マネーロンダリング)のノウハウを提供したり、背後から資金を吸い上げる「上納システム」を構築することで生き残りを図っています。
しかし、捜査幹部の証言によると、最近ではトクリュウ側のリーダーが暴力団の統制を完全に無視する事例も多発。縦社会の規律が崩壊し、制御不能となった若年層の犯罪集団が、伝統的ヤクザの縄張りを侵食するという歪んだ構図が生まれています。