文化人類学の研究において、人間が同種の肉を食べる行為は「カニバリズム(食人風習)」として分類・分析されてきました。カニバリズムの歴史を紐解くと、人類が人を食べた動機は単なる「肉飢え」ではなく、極めて精緻な精神世界と結びついていたことが判明しています。
研究者が定義する食人文化の理由は、主に以下の3つの類型に大別されます。
第一に、自部族の亡くなった肉親や長老を食べる「内カニバリズム(Endocannibalism)」です。これは死者への深い追悼、魂の肉体内への継承、遺体が土の中で腐敗することへの忌避感から行われました。食人文化と宗教的背景が不可分であることを示す典型例であり、愛情と敬意の儀礼的表現だったのです。
第二に、交戦関係にある敵部族の戦士を食べる「外カニバリズム(Exocannibalism)」です。敵の肉体を喰らうことでその勇気や生命力を奪い取る、あるいは最大の侮辱と報復として恐怖を植え付ける軍事的・呪術的な意味合いを持っていました。
第三に、飢饉や船の遭難、雪山での孤立といった極限状態における「生存目的の食人」です。これは部族の文化や儀礼とは異なり、生命維持のための緊急避難的な行動として歴史上あらゆる文明圏で記録されています。