まず押さえるべきは、人体のエネルギー収支における冷酷な計算式です。体脂肪1kgを燃焼させるために必要なエネルギーは約7,200kcal。つまり、脂肪だけで5kgを削ぎ落とすには、1週間で合計36,000kcal、1日あたり約5,140kcalのアンダーカロリー(消費が摂取を上回る状態)を作り出さなければなりません。
成人女性の基礎代謝と消費カロリー計算を行うと、日常の消費エネルギーは平均1,700〜2,000kcal、成人男性でも2,200〜2,600kcal程度です。何も食べずに毎日フルマラソンを走ったとしても、脂肪だけで5キロ落とすことは生理学的にあり得ない数字であることが分かります。ではなぜ、世の中には「1週間でマイナス5.2kg達成」という生々しい体験談が実在するのでしょうか。
その答えは、体内の「水分」「グリコーゲン」「腸内容物」の3要素にあります。
体内には肝臓と筋肉に約300〜500gのグリコーゲン(糖質)が蓄えられており、グリコーゲン1gに対し約3gの水分が結合しています。徹底した糖質制限や断食を行うと、体は真っ先にこのグリコーゲンを使い果たします。その結果、結合していた水分が一気に尿として排出され、これだけで約1.2〜2.0kgの重量が体外へ逃げていきます。これに加えて腸内の便や消化物(約1.0〜1.5kg)、細胞間に滞留していた余剰な塩分と水分(むくみ:約1.5〜2.0kg)が抜け落ちることで、脂肪の燃焼量は500g〜1kg未満であっても、体重計の上では「マイナス5kg」という数値が現実に出現します。これが「水抜き体重変化」の正体です。