「身体に良いのは分かるが、子どもが苦味を嫌がる」「口に残るエグ味が苦手」という声は根強く存在します。これには明確な生化学的根拠があります。大根特有の辛味・苦味は、アブラナ科植物が外敵から身を守るために生成するイソチオシアネート類や微量のアク(シュウ酸やポリフェノール)に起因します。これらを分解・溶出させるメカニズムを知れば、誰でも簡単に雑味のないクリアな味わいに仕上げられます。
プロが実践する葉大根下処理アク抜きの基本は、目的別の「塩熱処理」です。炒め物や汁物の具材にする場合は、沸騰した湯に1%程度の塩を投入し、まず硬い茎の部分を20秒、続いて葉全体を沈めてさらに10〜15秒ほど強火で一気に茹で上げます。ここで絶対に放置せず、即座に冷水・氷水に取ることが決定的な分岐点です。急冷によって組織の過剰な軟化を防ぎ、クロロフィルの退色を食い止めて鮮やかな緑色を固定化できるだけでなく、溶出した苦味成分が再び葉に吸収されるのを防ぐ効果があります。
一方、ネット上で議論が交わされる葉大根生食の真相について検証すると、間引き菜や極めて若いスプラウト状の若採り葉大根であれば、水にさらしてサラダとして生食することも可能です。しかし、成長した葉大根を生のまま多量に摂取することは推奨されません。筋繊維が強固で消化器官に負担をかける上、シュウ酸による舌のピリピリ感やえぐみが前面に出てしまうためです。生に近いシャキシャキ感を楽しみたい場合は、生のまま刻んで塩もみし、浸透圧で水分と苦味を絞り出す手法をとるのが調理科学上の正解です。