多くの親や子ども自身が「絵の才能がない」と口にして筆を止めてしまいます。ですが、教育現場で多くの子どもたちを指導してきた専門家は口を揃えてこの言説を否定します。絵が上手い子とそうでない子の間に存在する決定的な差は、筆先の器用さではなく、対象を網膜に映ったそのままの形で認識できているかという認知のプロセスにあります。
絵画指導で定評のある『イラスト・漫画教室 egaco(エガコ)』の現場レポートや、シリーズ累計100万部を超える大ベストセラー『1日10分でえがじょうずにかけるほん』(講談社)の著者である画家・あきやまかぜさぶろう氏のメソッドが示す通り、絵の上達の本質は極めて論理的です。あきやま氏は、あらゆる複雑なモチーフも「◯(まる)」「△(さんかく)」「▢(しかく)」という基本図形の組み合わせに還元できると提唱しました。対象を分解して捉える認知パターンさえ身につけば、どんな子どもでも破綻のない形を描き起こせるようになります。
そこでまず取り組みたいのが、観察力を鍛えるスケッチ練習です。最初から難しい静物や風景に挑む必要はありません。食卓にあるリンゴやマグカップ、身近な文房具をテーブルに置き、輪郭のカーブの角度や、隣り合うパーツ同士の距離感を「指でなぞる」ところから始めます。頭の中の「リンゴは丸くて赤い」という先入観を捨て、実物の凹凸や傾きをなぞる体験を重ねるだけで、子どもの線画は見違えるほど力強さと正確さを帯びていきます。