田舎暮らしを深める中で、松山ケンイチが直面した現実がありました。それが「鳥獣被害による野生動物の駆除問題」です。
農作物を荒らす害獣として、年間数十万頭規模のシカやイノシシが日本全国で捕殺されています。しかし、その肉の一部がジビエとして活用される以外、剥ぎ取られた皮の大部分は活用されることなく産業廃棄物として焼却処分されていました。自ら狩猟免許を取得し、山に入って罠を仕掛け、命を奪う当事者となった松山ケンイチは、この「命の使い捨て」に強い憤りと違和感を覚えます。
その葛藤から生まれたのが、2026年に彼自身が立ち上げたライフスタイルブランド「momiji(モミジ)」です。
「momiji」では、害獣駆除によってやむを得ず獲られたシカの皮を専門の鞣(なめ)し職人と連携して高品質なレザーへと加工。名だたるシューズメーカーや伝統工芸士、ファッションデザイナーとタッグを組み、レザージャケット、革靴、帽子、バッグなどのプロダクトへとアップサイクルしています。
注目すべきは、松山ケンイチが単なる「名義貸しの広告塔」として関わっているのではない点です。自ら軽トラックを運転して解体処理場へ足を運び、原皮の回収から検品、鞣し工場との打ち合わせに至るまで現場の実務に深く介入しています。小雪もまた、この循環型プロジェクトの理念に深く賛同し、展示会やポップアップイベントに自然体で寄り添いながら、夫婦共通のライフワークとしてブランドを育んでいます。