鹿島茂の現在と蔵書の行方|神保町共同書店や代表作の真価を解剖

鹿島茂の現在と蔵書の行方|神保町共同書店や代表作の真価を解剖

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鹿島茂の凄みは、学術的アプローチの厳密さと、大衆を惹きつける洒脱な文筆力の両立にあります。1949年に横浜で生まれた彼は、東京大学文学部仏文科を卒業後、同大学大学院人文科学研究科博士課程を満期退学。共立女子大学助教授・教授を経て、2008年から明治大学国際日本学部教授を務めました。

専門は19世紀フランス文学。とりわけオノレ・ド・バルザックやギュスターヴ・フローベール、シャルル・ボードレールが生きた時代の社会風俗や印刷メディア史において、日本を代表する泰斗です。その学識を世に知らしめた出世作が、1991年に刊行された『馬車が買いたい!』でした。当時の貴族や新興ブルジョワジーの生活費、馬車の維持費、娼婦への手当といった生々しい貨幣価値を一次資料から綿密に割り出し、文学テクストの裏にある欲望の構造を白日の下に晒した同作は、サントリー学芸賞を受賞しました。

私生活では、写真家として活動する息子の鹿島直をはじめとする家族との関係性も自著で率直に開示されています。特に古書購入のために借金を重ね、自宅の床が抜ける危機に怯えながら妻の視線から逃げ回る姿を描いたエッセイ群は、読者の爆笑と共感を呼び、1999年には『子供より古書が大事と思いたい』で読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞。学術の権威でありながら、人間臭い弱点や欲望を包み隠さずエンターテインメントに昇華させる文壇随一の語り手として、不動の地位を築き上げました。

森 瞳
著者

森 瞳

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