ネット上の言説において、上出氏に対してしばしば投げかけられる誤解が「単なる危険地帯ハンター」「スリルを売りにする命知らずのディレクター」という見方です。しかし、この認識は彼の本質を完全に見誤っています。
彼の手掛けた作品を子細に分析すれば明白なように、上出氏のカメラが向いていたのは「銃撃戦」や「犯罪の瞬間」そのものではなく、過酷な環境下で生きる名もなき人間が「何をどのように食べているか」という生活の営みでした。危険な場所へ赴くのはスリルを味わうためではなく、極限状態に置かれた人間の剥き出しの生を観察するための必然的な手段に過ぎません。
また、ネット上で一部囁かれた「局内での権力闘争に敗れて退職した」という噂も事実無根です。実際には社内でもその卓越した企画力は高く評価されており、慰留の声も強い中での前向きな独立でした。彼が戦っていたのは特定の人間関係ではなく、「表現を定型化し、均質化させていく巨大組織の構造そのもの」だったのです。