テレビ画面越しではなく、劇場やミニシアターの現場に足を運ぶ観客たちの間では、前田亜季に対する評価はまったく異なる熱狂を帯びています。
演劇界における彼女の評価を決定づけたのは、シス・カンパニー公演をはじめとする数々の本格ストレートプレイへの登壇です。新国立劇場などの大舞台において、小細工に頼らない凛とした発声、セリフのない瞬間に漂わせる心理描写の陰影は、辛口な演劇評論家や古くからの観劇ファンからも「作品の骨組みを支える頼もしい女優」と絶賛されてきました。SNS上の観客レビューを見ても、「登場した瞬間に舞台上のリアリティが跳ね上がる」「少女時代の面影を残しつつ、声の厚みと眼差しの深さに息を呑んだ」といった現場ならではの証言が溢れています。
また、2005年の名作青春映画『リンダ リンダ リンダ』(山下敦弘監督・ドラムの山田響子役)が4Kデジタルリマスター版としてニューヨークのトライベッカ映画祭で上映され、全国公開された際にも大きな注目を集めました。公開当時の熱量を知る世代だけでなく、Z世代のシネフィルからも「飾らない佇まいが今見ても鮮烈で美しい」と再評価の嵐が巻き起こったことは記憶に新しい事実です。
さらに、大友啓史監督がメガホンを取った大作映画『宝島』への出演など、重厚な人間ドラマを志向する一流の作り手たちが、確かな演技力を必要とする重要な局面で前田亜季を起用し続けています。目先の視聴率競争から離れたところで、彼女は映画人・演劇人から絶大な信頼を勝ち得ているのです。