茨城県内の飲食店や旅館であんこう鍋がメニューに並ぶ期間は、例年11月〜3月頃までが一般的です。しかし、食通たちがこぞって現地へ足を運ぶ真のベストシーズンは、水温が急激に下がる12月〜2月の厳冬期に限られます。
あんこうは春先に産卵期を迎えるため、冬本番になると栄養を蓄えようと肝臓(あん肝)が急速に肥大化します。茨城県沿岸で水揚げされる常磐(じょうばん)もののあんこうは、親潮と黒潮が交差する豊かな漁場で育つため、脂の乗りが抜群です。取材に応じた地元の老舗料理人は「11月の走り(初物)もあっさりして美味いが、あん肝が限界まで脂を蓄え、出汁に溶け込んだときのコクが極まるのは間違いなく1月中旬から2月上旬」と太鼓判を押します。
また、茨城県の伝統的な解体技術である「茨城 あんこう 吊るし切り」もこの時期の風物詩です。魚体が大きく表面がぬめりで覆われているため、まな板の上では滑って包丁が入りません。下顎に鉤(かぎ)をかけて吊るし、口から水を流し込んで胃を膨らませ、身・皮・胃袋(水袋)・エラ・肝・卵巣(ぬの)・ヒレという「あんこうの七つ道具」を無駄なく切り分ける職人技は、冬の茨城観光における大きな見どころとなっています。