スコッチヨーク機構の最大の特徴は、往復直線運動と回転運動の変換において、歪みのない「純粋な単振動(Simple Harmonic Motion)」を創出できる点にあります。一般的なクランク機構ではコネクティングロッドの傾き(連桿比)によって二次振動などの高調波歪みが生じますが、スコッチヨーク機構では数学的な三角関数そのままの挙動を示します。
この機構の基本構成は、回転軸に固定されたクランクピン(偏心ピン)と、そのピンが内部をスライドする直交溝(スロットまたはヨーク部)、そして直線運動を行う出力ロッドから成り立ちます。回転角を $\theta = \omega t$ ($\omega$ は角速度、rad/s)、クランク半径(偏心量)を $r$ と定義した場合、ピストン部の変位 $x$、速度 $v$、加速度 $a$ は極めてシンプルな計算式で記述されます。
【スコッチヨーク機構のキネマティクス計算式】
・変位: $x(t) = r \cos(\omega t)$
・速度: $v(t) = \frac{dx}{dt} = -r\omega \sin(\omega t)$
・加速度: $a(t) = \frac{dv}{dt} = -r\omega^2 \cos(\omega t)$
一般的な内燃機関に用いられるスライダクランク機構の場合、コネクティングロッド長 $L$ とクランク半径 $r$ の比率によって加速度式に $\cos(2\omega t)$ の成分(二次振動項)が混入します。そのため、上死点付近と下死点付近でピストンの加速度プロファイルが非対称になります。対してスコッチヨーク機構は、スロットが常にピストンの移動軸と直角を維持するため、ピストンの位置はクランク角度の余弦(コサイン)そのものとなり、物理的に完全な正弦波運動ピストンが成立します。
設計現場において、振動試験機や正弦波加振機を製作する際にスコッチヨーク機構が第一候補に挙がるのは、余計な電子制御や補正アルゴリズムを介することなく、機械構造そのものが純粋な正弦波を生み出すためです。