「あれほど繁盛していた店が、なぜ忽然と消えてしまったのか」――ネット上では倒産説や権利関係のトラブルなど様々な憶測が飛び交いました。しかし、外食産業の財務動向や当時の業界誌の記録を紐解くと、そこには2000年代初頭の日本を襲った「外食産業の構造激変」という過酷な現実が横たわっています。
ミラノのおかず屋さんの閉店理由を突き詰めると、主因は3点に集約されます。第1に、1990年代後半から急速に進んだ「カジュアルイタリアンのコモディティ化(大衆化)」です。バブル期の高級イタ飯ブームを経て、日常食へと降りてきたパスタやピザの領域に、低価格路線を極めた「サイゼリヤ」などの大型チェーンが急速に台頭しました。一皿1,000円〜1,400円前後の中価格帯で勝負していた都市型カジュアル店は、急速に客足の分散を強いられることになります。
第2に、都心一等地を中心としたテナント賃料の高止まりと原材料費の上昇です。主要店舗が集中していた渋谷、吉祥寺、下北沢などの商業激戦区では、商業ビルの建て替えや契約更新に伴う固定費の負担が重くのしかかりました。第3に、消費者のライフスタイルの多様化です。カフェブームや多国籍料理の流行により、若者の「お出かけ外食」の選択肢が一気に拡散したことが挙げられます。
ミラノのおかず屋さんの運営会社は、時代の変化と店舗ごとの採算性を精査する中で、不採算拠点の整理を進めました。最終的には多角化していた飲食事業の見直しに伴い、ブランド自体の継続を断念。企業組織の事業ポートフォリオ再編に伴う撤退が、全店閉店に至った客観的な実態です。