産後うつ病の根本的な発症メカニズムには、個人の性格以上に生物学的な急変が関与しています。妊娠中に大量に分泌されていた女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)は、胎盤の娩出に伴って出産後数日のうちに急激に底をつきます。このホルモンの落差は、更年期の変化をわずか数日で体験するほどの強烈な衝撃を脳にもたらします。
発症時期については、「いつからいつまで続くのか」という疑問が多く寄せられます。一般的に産後2週間から1カ月前後に発症しやすいとされていますが、授乳のリズム崩れや夜泣きが激化する生後3〜6カ月、あるいは復職を意識し始める生後9カ月〜1年頃に発症する「遅発性産後うつ」も珍しくありません。
激しいホルモンバランスの崩れに、「慢性的な睡眠不足」「慣れない育児への不安」「社会的孤立」という悪条件が重なることで、脳内のセロトニンをはじめとする神経伝達物質が枯渇し、正常な思考が保てなくなるのが病態の本質です。