羊肉の呼称を分ける第一の基準は、厳密な月齢と永久門歯(大人の歯)の生え変わり状況です。日本へ輸入される羊肉の大半を占めるオーストラリア(AUS-MEAT基準)やニュージーランドの公的規格において、その区分は極めて厳密に法制化されています。
まず「ラム(Lamb)」は、生後1年未満で永久門歯がまだ1本も生えていない仔羊を指します。骨格や筋線維が柔らかく、脂肪の融点が低いため、口当たりが極めて軽やかなのが特徴です。その中でも特に、春に生まれて母乳と栄養価の高い春の初生牧草だけで育ち、初夏から秋にかけて出荷される生後4〜6ヶ月前後のものはスプリングラム(Spring Lamb)と呼ばれ、ミルキーで澄んだ風味を持つ最高級品として珍重されます。
対して「マトン(Mutton)」は、生後2年以上が経過し、永久門歯が2本以上生えた成羊の肉です。牧草を食べ続けて十分に運動した成羊の肉は、筋線維が発達して濃い赤身となり、旨味成分であるアミノ酸や特有のフレーバーが凝縮されています。
そして、この両者の間に位置する知る人ぞ知る存在が「ホゲット(Hogget)」です。生後1年以上2年未満で永久門歯が1〜2本生えた羊を指します。ラムの柔らかくジューシーな肉質と、マトンの持つ深いコク・旨味の両方を併せ持つ「奇跡のバランス」と評されますが、飼育期間と歩留まりの経済的観点から生産農家が市場へ出荷するタイミングが極めて短く、日本国内の流通量は全体の数パーセントにも満たない希少部位となっています。