ネット上の掲示板やSNSでは、今なお「鈴木康弘氏は親の七光りだけで役員になった無能な二世だったのではないか」といった極端な意見が見受けられます。しかし、これは実務実態を知らない典型的な誤解です。
康弘氏は大学卒業後、父の会社には入らず富士通でシステムエンジニアとして泥臭い開発業務に従事しました。その後、当時まだ黎明期だったソフトバンクへ転職し、孫正義氏の直下でネットビジネスの最前線を経験しています。1999年に立ち上げた書籍通販サイト「イー・ショッピング・ブックス」は、日本におけるECビジネスの草分け的存在であり、敏文氏のコネではなく康弘氏自らの起業家精神によって生まれた事業でした。
失敗と評された「オムニ7」についても、現在では見直しの声が出ています。スマートフォンのアプリ統合やID連携、店頭受け取りモデルなど、康弘氏が2015年当時に描いていた構想は、2020年代の流通業界では当たり前のインフラとなっています。時代に対して構想が数年早すぎたこと、そして巨大組織の縦割り意識を融解しきれなかったことが最大の障壁でした。決して康弘氏個人の技術的見識が欠如していたわけではありません。
【プロの結論】カリスマ創業者・二世問題から学ぶべき教訓
セブンのお家騒動は、日本の企業社会における「カリスマリーダーの事業承継」と「二世人材の処遇」に極めて深い教訓を投げかけています。
敏文氏自身は創業者(伊藤雅俊氏)ではなくサラリーマン経営者から最高権力者へ登りつめた人物でした。だからこそ、「優秀な人材を適所に配置しただけであり、世襲の意図は毛頭なかった」と主張し続けました。しかし、家族社会学や組織心理学の観点から見れば、「トップの親が実の子を要職に抜擢する」という行為そのものが、客観的実績の有無にかかわらず組織内の疑心暗鬼と心理的バウンダリーの崩壊を生むことは避けられません。
康弘氏がグループを離れ、独立した経営者としてDXコンサルティングで実績を上げている現在の姿こそ、過度な同族依存や組織のしがらみから健全に自立するための唯一の解であったといえます。