箸の素材として選ばれるのは、極めて緻密で重厚な銘木たちだ。漆黒の気品と圧倒的な耐久性を誇る黒檀や、深みのある赤褐色と美麗な木目が目を引く紫檀。これらの希少素材は極めて硬く、加工には高度な技術と刃物の研ぎ澄ましが欠かせない。
職人は素材ごとの硬さや曲がり癖を瞬時に見極め、木目を読む。1999年に東京都指定伝統工芸品の指定を受けたこの工芸は、歴史に甘んじることなく、今もなお実用性と美意識の極限を追求し続けている。手にとった瞬間に伝わるズッシリとした心地よい重量感と手に馴染む滑らかさは、本物だけが持ち得る圧巻の説得力だ。