ステロイドパルス療法とは、副腎皮質ホルモン製剤の一種であるメチルプレドニゾロンの点滴を、通常の内服薬(プレドニゾロン換算で1日5〜30mg程度)の数十倍に及ぶ1日500mg〜1000mgという超大量で、2〜3時間かけて点滴静注する治療法です。一般的には「3日間連続投与+4日間休薬」を1クールとし、病状に応じて1〜3クールを繰り返します。
「なぜそれほどの大量投与が必要なのか」という疑問に対する医学的な回答は、「ゲノム作用」と「非ゲノム作用」の複合発揮にあります。通常のステロイド内服投与では、細胞内の受容体を介して遺伝子の転写を調節する「ゲノム作用」によって数時間から数日かけて抗炎症効果を発揮します。しかし、臓器不全や不可逆的な機能障害が急速に進行する病態では、それだけでは間に合いません。パルス療法による血中濃度の急激なスパイク(突出)は、細胞膜や受容体に直接作用する「非ゲノム作用」を惹起し、数十分から数時間という極めて短い時間で過剰な免疫反応・サイトカインストームを強力に鎮圧します。
日本国内の臨床現場において、ステロイドパルス療法が選択される主な適応疾患は以下の通りです。
- ステロイドパルス療法とIgA腎症:腎組織の糸球体炎症を急速に抑え、不可逆的な腎硬化や透析移行を食い止めるために実施。扁桃摘出術(扁摘パルス)と組み合わせて寛解を目指すプロトコルが標準化されています。
- ステロイドパルス療法と突発性難聴:内耳の血流障害や急性炎症に対し、発症後早期(原則として発症後2週間以内、できれば48時間以内)に投与を開始することで、聴力回復の確率を有意に高めます。
- ステロイドパルス療法と脱毛症:急速に拡大する多発型円形脱毛症や全頭型脱毛症の急性期において、毛包周囲のリンパ球浸潤を遮断し、毛根の破壊を最小限に防ぎます。
- 膠原病・自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)のループス腎炎・中枢神経病変、多発性筋炎/皮膚筋炎の急性間質性肺炎、多発性硬化症の急性増悪期など。