作品性の高まりと撮影環境の適正化は、必ずしも反比例するものではない。芥川賞を受賞した又吉直樹の小説を原作とするドラマ『火花』は、売れない芸人たちの苦悩と泥臭い生き様を描き出し、日本のエンターテインメント産業における新たな表現の地平を切り拓いた。
さらに、相撲界の光と影を極限のリアリティで描き出し世界的なヒットを記録した『サンクチュアリ -聖域-』などの話題作においても、過酷な肉体改造や過激な演技要求と並行して、厳格なメンタルケアや撮影現場での労務管理が実施されていたことが知られている。
劇中で描かれるキャラクターたちの血の通ったヒューマンドラマの裏には、出演者やスタッフの健康と生活を第一に考える現代的な制作態勢が存在している。命や家族を削って作品を作る時代は終わりを告げ、健全な制作環境こそが卓越した表現を生み出すという認識が業界全体に広がりを見せている。