結論から言えば、アメリカ大統領の執務机(レゾルート・デスク)にも、ロシアのクレムリンにも、押せば即座にミサイルが飛んでいくような「赤い物理ボタン」は存在しません。この強烈な視覚的イメージは、冷戦期のプロパガンダや映画『博士の異常な愛情』などのフィクション作品が作り上げたパブリックイメージに過ぎません。
かつてホワイトハウスの大統領執務室に設置されていた「机上のボタン」として有名なのは、リンドン・ジョンソン元大統領やドナルド・トランプ元大統領が愛飲する炭酸飲料を執事へ注文するための呼び出しボタンでした。現実の核兵器システムは、誤作動や単独の狂気による暴発を物理的・制度的に防ぐため、単一のスイッチで完結するような単純な構造を徹底的に排除して設計されています。
現実における「核のボタン」とは、物理的な突起ではなく、大統領の正当な指揮権を認証し、世界中に展開する戦略軍へ暗号化された攻撃命令を伝達するための複合的な通信・意思決定システム全体を指しています。