カルチャー文脈におけるもう一つの巨大な核が、2013年に公開された映画『俺俺』(三木聡監督)です。第5回大江健三郎賞を受賞した作家・星野智幸の同名小説を原作とし、KAT-TUNの亀梨和也が単独主演を務めたことで大きな話題を呼びました。
物語は、郊外の家電量販店で働く冴えない青年・均が、なりゆきで手に入れた他人の携帯電話を使って軽い気持ちで「オレオレ詐欺」を働いてしまうところから幕を開けます。手に入れた大金で日常へ戻ったはずの均でしたが、やがて彼の前に「全く同じ顔と記憶を持つ別の俺」が現れます。
増殖する「俺」たちは互いを認め合い、奇妙なコミュニティ「俺山」を形成して居心地の良い共同生活を営みます。しかし、些細な価値観のズレから調和は急速に崩壊。「許せない俺」を消去する「俺による俺の削除(サバイバル)」という凄惨な殺し合いへと発展していく結末は、観る者に強烈なトラウマと問いを突きつけました。