カタラーナの正式名称は、現地の言葉で「クレマ・カタラーナ(Crema Catalana)」または「クレマ・デ・サン・ジュゼップ(Crema de Sant Josep)」と呼ばれます。その名の通り、スペイン北東部のカタルーニャ地方発祥の伝統菓子です。
クレマカタラーナの歴史と由来は古く、中世修道院の時代にまで遡ります。カタルーニャ地方の修道院で司教を迎える際、修道女が作ったフラン(プリン)が固まらずに失敗し、急遽コーンスターチを足して鍋で煮詰め、熱した鉄ゴテで砂糖を焦がして提供したところ大絶賛されたという逸話が残されています。
また、毎年3月19日の「聖ヨセフの日(サン・ホセの日・父の日)」に家庭で作って食べる祝い菓子としての伝統も長く受け継がれてきました。カタルーニャの人々にとって、クレマ・カタラーナは春の訪れを告げる家庭の味そのものです。
食文化史の研究者の間では、「クレームブリュレの起源はクレマ・カタラーナである」という説が有力視されています。フランスの料理書にクレームブリュレが初めて登場したのは17世紀末(1691年・フランソワ・マシアロ著『王室と宮廷の料理人』)ですが、カタルーニャ地方の文献にはそれ以前から同様のカスタードデザートが記録されており、ピレネー山脈を越えてフランスへと伝播した過程で、地域の嗜好に合わせて生クリーム主体のレシピへとアレンジされたと考えられています。