ネット上の情報の中には、「ニットは絶対にハンガーで干してはならない」という極端な言説が散見されます。しかし、これは半分正しく半分は誤解です。問題なのは「ハンガーという道具そのもの」ではなく、「水分の重みが特定の狭い面積に集中すること」にあります。荷重さえ分散させれば、ハンガーを使った吊り干しの方が風通しを確保でき、平干しよりも乾きが格段に早くなります。
万が一、誤った干し方によって肩の部分がポコッと角のように飛び出てしまったり、全体が伸びてしまったりした場合でも、諦めて部屋着に降格させる必要はありません。ウールやカシミヤなどの天然動物繊維には、熱と水分によって元の形状に戻ろうとする「クリンプ(繊維の縮れ)の記憶復元特性」が備わっているからです。
飛び出た肩ポコを一瞬で解消するリカバリー手順は次の通りです。
- アイロン台の上に型崩れしたニットを平らに置く。
- アイロン本体を生地に直接押し付けず、1〜2cmほど浮かせる。
- 変形した肩の飛び出た部分に向けて、たっぷりとスチーム(蒸気)を勢いよく噴射する。
- 蒸気を含んで温まった生地を、手で優しく「キュッキュッ」と丸め込むように揉みほぐしながら形を整える。
- 熱が完全に冷めるまで動かさずに放置し、繊維の縮み形状を定着させる。
アイロンの底面を直接プレスしてしまうと、編み目が押し潰されてウール特有のふんわりとした風合いが失われ、テカリの原因になります。あくまで「蒸気の熱と水分だけで繊維を自然に縮ませる」ことが失敗しない最大のポイントです。