「熱がないから会社を休む理由がない」「市販の咳止めシロップを飲めばそのうち収まるだろう」――こうした判断が招いた深刻なトラブルが、医療現場やソーシャルメディア上で数多く共有されています。
都内の総合病院に勤務する呼吸器専門医は、取材に対して次のような臨床の現場感を語っています。「毎月のように『熱はないのに咳が1ヶ月以上止まらない』と駆け込んでくる初診患者がいます。その大半が、最初の2週間をドラッグストアの風邪薬で耐え凌ぎ、夜も眠れなくなって肋骨にひびが入ってからようやく来院するケースです。検査をすると気道炎症の数値(呼気NO濃度)が跳ね上がっており、もっと早い段階で吸入薬を開始していれば数日で日常生活を取り戻せていたはずの患者ばかりです」。激しい咳込みによって肋骨骨折や気胸を起こすリスクは、決して稀な事態ではありません。
SNSやQ&Aサイトを検証しても、「熱なし咳だけで受診したらマイコプラズマだった」「喉のイガイガだと思っていたら咳喘息と診断され、放置したせいで吸入ステロイドを手放せなくなった」という後悔の投稿が溢れています。熱という客観的な体温変化がないことへの油断が、受診への初動を決定的に遅らせてしまう実態が浮き彫りになっています。