下顎呼吸は人間だけの現象ではありません。犬や猫など、哺乳類全般の臨死期においても全く同じ現象が発生します。獣医学の臨床現場においても、ペットの下顎呼吸は死が極めて切迫しているサインとして認識されています。
犬や猫の場合、普段の開口呼吸(ハァハァと舌を出して呼吸するパンティング)と下顎呼吸を見分けることが大切です。
- 通常の開口呼吸:意識があり、目を合わせたり体を動かしたりできる。胸郭が素早く上下している。
- 愛犬・愛猫の下顎呼吸:呼びかけに全く反応せず、瞳孔が開き気味になる。胸郭は動かず、頭を後ろに反らせるようにして下あごだけで息を吸い込もうとする。体温が低下し、四肢の先が冷たくなる。
ペットがこの状態に陥ったとき、飼い主が最も悩むのが「夜間救急動物病院へ連れて行くべきか否か」という選択です。しかし、下顎呼吸に達したペットをキャリーケースに入れ、車で揺られながら病院へ運ぶ道中は、動物にとって極度のストレス以外の何物でもありません。多くの場合、診察台の上や車中で力尽きてしまいます。
すでに老衰や回復不能な末期疾患であると獣医師から告げられている場合は、病院へ走るのではなく、住み慣れた自宅でお気に入りの毛布に包み、優しく体を撫でながら看取ることが、言葉を話せない愛犬・愛猫に対する最大の愛情です。体を冷やさないよう室温を適切に保ち、喉が渇いているようなら水で濡らしたガーゼで唇を湿らせてあげるケアが推奨されます。