降板が決定した時点で、放送のストックは数週間分しか残されていませんでした。全国の視聴者を抱える帯ドラマの現場が破綻寸前に追い込まれる中、白羽の矢が立ったのが実力派女優の中田喜子氏でした。
当時、すでにTBS系ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』などで橋田脚本の真髄を誰よりも理解していた中田氏へのオファーは、まさに乾坤一擲の決断でした。この中田喜子代役経緯について、中田氏自身も後年のテレビ番組や回顧インタビューで「あまりにも急な依頼であり、最初は自分に務まるのか大きな恐怖があった」と率直に明かしています。しかし、作品の危機を救うべく依頼を快諾し、第137回(1995年3月18日放送)から第2部ヒロインとして違和感なく画面に溶け込みました。
安田成美氏のみずみずしく等身大の若き女性像から、中田喜子氏の芯が強く落ち着きのある女性像へとバトンタッチされたことで、物語は橋田壽賀子氏が意図していた「過酷な試練を乗り越えて脚本家として大成する自立した大人の女性」というテーマ性へ見事に合致することとなりました。中田氏の圧倒的な長台詞の処理能力と現場を鼓舞するプロ意識がなければ、ドラマ自体が空中分解していた可能性すらあったと現場クルーは口を揃えます。