日常の定番スナックが合格祈願の象徴へと変貌を遂げた背景には、マーケティング史に残るユニークな経緯が存在します。もともと1935年にイギリスで誕生したキットカットが、日本で「受験生の守り神」として認知され始めたのは1990年代後半のことでした。発端は九州地方の方言である「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ)」と商品名が酷似していることから、地元の受験生同士がゲン担ぎとして互いに贈り合った自然発生的なムーブメントにあります。
当時、九州地区のスーパーやコンビニエンスストアでセンター試験直前にキットカットが棚から消える現象を不審に思ったネスレ日本の担当者が現地調査を行い、受験生たちの自発的な行動を知ることになりました。この事実を受け、企業主導の押し付けではなく、「受験生を心から応援するブランド」としてのスタンスを貫く決断を下したことが、今日に至る信頼の礎となっています。
2003年からは公式な「キットカット 受験応援」キャンペーンが本格化し、受験生が宿泊するホテルでの応援メッセージ配布や、全国の教育現場との連携へと広がりました。さらに2009年には日本郵便との協業による「キットメール」を郵便局の窓口で発売。遠方に住む祖父母や親戚から受験生へ、手書きメッセージと送料込みで直接想いを届けられる画期的な仕組みを構築し、社会的なインフラとしての地位を確立しました。