南沙織「色づく街」が心震わせる理由|名曲の舞台と誕生秘話を追う

南沙織「色づく街」が心震わせる理由|名曲の舞台と誕生秘話を追う

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1971年のデビュー以来、筒美京平・有馬三恵子の両輪体制で快進撃を続けていた南沙織でしたが、1973年当時のアイドル界は大きな地殻変動を迎えていました。森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中三トリオ」や浅田美代子らが台頭し、元祖アイドルとしてのポジションからのステップアップが急務だったのです。そこでプロデューサー陣が仕掛けた色づく街の誕生秘話には、従来のアイドルソングの枠組みを打ち破る明確な戦略が存在していました。

作曲を手掛けた筒美京平氏は、当時アメリカで隆盛を極めていたフィラデルフィア・ソウル(フィリー・ソウル)や、ヨーロッパの洗練されたフレンチ・ポップスのエッセンスを大胆に導入しました。マイナーコードで切なく始まりながら、サビ前で劇的な転調を見せ、哀愁の中に気品あるストリングスを重ね合わせる構成は、まさに筒美京平サウンドの極致と呼ぶにふさわしい仕上がりです。関係者の証言によると、筒美氏は南沙織の少しハスキーで陰影のあるアルトボイスの響きを誰よりも理解しており、「彼女の歌声がもっとも美しく響く音域と感情の揺らぎ」を逆算してメロディを紡ぎ出したとされています。

一方、作詞を担当した有馬三恵子氏の筆致も冴え渡っていました。デビュー曲『17才』で見せた瑞々しい太陽と海の情景から一転、季節の移ろいとともに散りゆく恋心を、抑制の効いた大人の言葉遣いで表現。単なる「泣き濡れる少女の失恋」ではなく、痛みを抱えながらも前を向いて歩き出す女性の内面描写へと昇華させました。当時弱冠19歳だった南沙織は、この楽曲のレコーディングに際して何度もテイクを重ね、歌詞カードの行間に込められた感情を喉元に刻み込んだと当時の回想インタビューで語っています。

山田 真由
著者

山田 真由

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