「ヤクザシャツ」のデザイン的特徴を分解すると、大きく二つの文化的要素にたどり着く。一つは日本の伝統的な刺青(和彫り)文化、もう一つは戦後日本に流入したアロハシャツである。
日本の刺青は江戸時代から侠客や職人の間で広まり、龍、鯉、牡丹、唐獅子牡丹といった図柄は「任侠」の世界と強く結びついてきた。背中一面に彫る大判の和彫りは、着物を脱いだ時にのみ見える「隠れた誇示」である。この図柄と精神性が、シャツという洋装の上にプリントや刺繍として移植されたのが「ヤクザシャツ」の本質だ。
一方、アロハシャツは戦後、アメリカ経由で日本に普及した。1950年代から1960年代にかけて、日本でも夏のカジュアルウェアとして定着し、そのオープンカラーと大胆な総柄デザインは、従来の和服にはない開放感を持っていた。この「開放的で派手な柄」という器に、日本の任侠文化が持つ「和柄の威圧感」が注ぎ込まれた結果、独自の進化を遂げたのが、いわゆるヤクザシャツである。
刺繍シャツという観点では、機械刺繍技術の発展が転機となった。1970年代以降、多色使いの複雑な図柄をシャツの背中や胸元に施すことが可能になり、龍や虎が布地の上で立体的に浮かび上がるデザインが量産されるようになった。これが現在「ヤクザシャツ」として認知されているビジュアルの完成形である。