インターネット上の掲示板やSNSで定期的に話題にのぼるのが、「自動車のフロントガラス用撥水剤(ガラコなど)を浴室の鏡に塗ると強力な曇り止めになる」という裏ワザです。しかし、化学的知見と現場の検証結果から導き出される車用ガラコを浴室の鏡に代用する真相は、明確に「推奨できない誤ったアプローチ」です。
自動車用の撥水コーティングは、時速40〜60km以上の走行風によって水玉を吹き飛ばすことを前提に設計された「撥水性(水を弾く)」の技術です。一方、風が吹かない浴室で撥水剤を塗布すると、水蒸気は極小の水玉となって鏡面にびっしりと張り付きます。走行風のない密閉空間では水滴が自重で流れ落ちず、むしろ通常以上に光を乱反射させて視界を完全に遮ってしまいます。
加えて、車用の撥水剤にはシリコーン樹脂やフッ素樹脂、引火性のある揮発性有機溶剤が含まれているケースが多く、換気が不十分な浴室での使用は健康被害や床面の著しいスリップ事故を招く恐れがあります。浴室の鏡に必要なのは「水を弾く撥水」ではなく、「水を平滑な膜として広げる親水」のコーティングです。この原理原則を取り違えてしまうと、どれほど強力なカー用品を使っても満足な結果は得られません。