赤坂一龍 別館を語る上で欠かせない唯一無二の看板料理が、韓国語で「雪のように白いスープ」を意味する雪濃湯(ソルロンタン)です。創業者であるハン・ヨンジャ氏の情熱と伝統的な製法を受け継ぎ、牛の骨やさまざまな部位の肉を巨大な寸胴で骨の髄まで何十時間も煮出し続けて作られます。
運ばれてきた器から立ち上る湯気は、牛骨特有の芳醇なアロマを漂わせながらも、動物性油脂の嫌な臭みは一切ありません。見た目は濃厚なパイタンスープのようでありながら、ひと口すすると驚くほど軽やかで雑味がなく、すっと身体の細胞に染み渡っていくような感覚を覚えます。丁寧にアクと余分な脂をすくい取り続ける緻密な仕込み作業こそが、重層的な旨味と軽快な後味を両立させる最大の秘訣です。
スープの底には、じっくり煮込まれてほろほろと解ける牛肉のスライスと、スープの旨味をたっぷりと吸い込んだ春雨が沈んでいます。過剰な化学調味料に頼らず、牛骨本来のゼラチン質とコラーゲン、アミノ酸だけで構成された滋味深い味わいは、胃腸が疲れているときや二日酔いの朝にこれ以上ない救いとなります。
【実践解説】雪濃湯(ソルロンタン)の伝統的な食べ方と流儀
初めて赤坂一龍 別館を訪れた人が最も戸惑うのが、提供されたスープの「圧倒的な淡麗さ」です。一般的なラーメンや牛骨白湯スープを想像して口をつけると、「味が薄いのではないか」と錯覚するかもしれません。しかし、これこそが本場ソウルの名店と同じ本物のソルロンタンの証です。
ソルロンタンは、「提供された瞬間は未完成であり、食べる人間がその場で完成させる料理」という文化を持っています。基本の組み立て手順を知っておくことで、この一杯の真価を余すところなく堪能できます。
まずは何も入れずにひと口すすり、牛骨本来のピュアな甘みと香りを確かめます。次に、卓上に置かれた粗塩を少量ずつ加え、好みの塩加減へと引き締めていきます。塩味が加わることで牛骨の輪郭が一気に際立ち、眠っていた旨味が劇的に覚醒します。お好みで黒胡椒を振ることで、ピリッとしたアクセントが生まれます。
中盤からは、小皿で提供される熟成したカクテキ(大根キムチ)の漬け汁をスープに回し入れたり、キムチそのものを投入して酸味と辛味を加えるのが本場の通の食べ方です。最後にセットの白米をスープの中へ豪快に沈め、クッパのようにして掻き込むことで、最後の一滴まで至福の余韻を味わい尽くすことができます。