ニコちゃんマーク(英語名:スマイリーフェイス)の歴史は、1963年12月のアメリカ・マサチューセッツ州ウースターに始まります。当時のステート・ミューチュアル生命保険会社が他社との合併に伴い、社内の士気低下や従業員の不安を解消するための社内キャンペーンを企画。そのポスターやバッジのデザインを依頼されたのが、地元の商業美術家ハーベイ・ボール(Harvey Ball)でした。
ボール氏に与えられた時間はごくわずかでした。彼は黄色の画用紙の上にコンパスを使わずフリーハンドで円を描き、2つの楕円の目と弧を描く口を黒インクでサッと走らせました。デザイン完成にかかった時間はわずか10分足らず、制作報酬として支払われたのは45ドル(当時のレートで約1万6,000円)だったと記録されています。
彼がデザインしたオリジナルのスマイリーには、幾何学的に完璧ではない手描きならではの特徴がありました。
- 左右非対称の目:左目が右目に比べてわずかに大きく、手描きの温もりがある。
- わずかに歪んだ口元:完全な半円ではなく、両端に「えくぼ(ディンプル)」のタッチが入っている。
- なぜ黄色なのか:太陽のように明るくポジティブな感情を想起させ、黒い線画とのコントラストが最も際立つビタミンカラーだったため。
当初は100個の缶バッジとして配られた小さなスマイルは、社員だけでなく顧客の間でも爆発的な反響を呼び、数万個単位で増刷される異例の社会現象へと発展していきました。