志る幸を訪れる来訪者の大半が注文するのが、茶聖・千利休の侘び茶の精神を宿した名物「利休弁当(利久辨當)」です。端正な半月型の曲げわっぱに盛られた料理は、派手な装飾を排しながらも、職人の繊細な手仕事が随所に光ります。
弁当の内訳は、滋味深いかやくご飯(季節により異なる)、旬の素材を丁寧に炊き上げた炊き合わせ、丁寧に焼き上げられた魚や玉子焼きなどの口取り、そして自家製の香の物。これに志る幸の真骨頂である選べる「汁物」が組み合わされます。汁物は「白味噌」「赤味噌」「すまし汁」の3種からベースを選び、具材を自由に組み合わせるシステムとなっています。
特筆すべきは、京都の伝統を凝縮した「白味噌仕立て」の汁物です。一般的な味噌汁の概念を覆すほどにとろりと濃厚で、米麹由来の上品な甘みと、昆布と鰹節から引いた澄んだ出汁が完璧な調和を見せます。具材の選択肢は豆腐、湯葉、じゅんさい、落とし芋など多岐にわたりますが、中でも常連客の支持を集めるのが「鯛のあら汁」です。鯛の骨から染み出た野趣あふれる旨味と白味噌のクリーミーな甘みが溶け合い、最後の一滴まで飲み干さずにはいられない深みを生み出しています。
また、ツウの間で語り継がれるのが「おとし飯」の作法です。残したご飯に熱々の汁を回しかけ、出汁と米の旨味を最後の一粒まで味わい尽くす食べ方は、かつての汁講の原点を追体験するような贅沢な充足感をもたらしてくれます。